連載346。小説『山を仰ぐ』題5章ー②ー8 (写真は、5年前の庭の菜園)

連載346。小説『山を仰ぐ』第5章・栄弥―②俊量が語る青年栄弥―8 
 (前回栄弥は、志野さんのためにも、何が何でも糸紡ぎ器の改良をしたいと決意しました)

 その日以来、栄弥さんは、明けても暮れても、もっと早く効率良く糸を紡ぐ方法がないかと考え始めました。それまで漠然としていたものを、具体的に産み出す必要に迫られたのです。
 見る物聞く物の全てが、以前と違ってきました。見えている現実の背後に、今自分が産み出したいと願っているある具体的な何かが隠れていて、それを目を凝らして探しだしているような毎日でした。
 どうしたら、もっと早くもっと沢山の糸が紡げるか。
 思う事は沢山ありました。
 左手に持つ綿塊の量がもっと多ければ、糸継ぎの回数が減って、時間は短く出来る。
 糸継ぎは、最後の糸を右手で取り、左手で新しい綿塊を掴んでそれを重ねて繋げるだが、これが何らかの方法で人手を使わずにできれば、切れ目なく糸が紡げる。
 はずみ車で木軸を回転させ、木軸の先でまず糸によりをかけ、次に木軸に糸を巻き取るだが、これが同時にできたら、時間は短くなる。
 一度に数本の糸を引き出せれば、今の一本より沢山できる。
 右手のはずみ車回しを手ではなく足で廻せば、両手で綿塊をつかみ、糸が同時に数本引き出せるかもしれない。
 糸車を回す力は足でなくてもよい。水の流れを使って廻せたら、人がいなくても仕事が進む。
 などなど、、、、。
 思うことは沢山あっても、何をどうしたら良いかの焦点が絞れません。考えが頭の中をグルグルするだけで、月日は瞬く間に過ぎて行きました。

 (次回、連載347に続く。
 写真は5年前の今日の庭の菜園。ちゃんと、耕して畝まで作ってある、、、。今は、小説にかまけて、草ぼうぼうです。)連載346。小説『山を仰ぐ』題5章ー②ー8 (写真は、5年前の庭の菜園)

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