盆の入りの土曜日の夕方、「癌検診の結果、精密検査受診の必要あり」の書類が届きました。
 肺がんCTでしたが、「肺CTでは、他臓器の癌も発見することがあります」と言う、何やら恐ろし気な文字。
 元気でいた旧友が肺がんの宣告を受け、アッという間に亡くなったことを想い出し、落ち込みました。まず思ったのは
 「要精密検査といっても、まだ癌と確定したわけではない」。
 次に思ったのは
「癌で死ぬことになっても、ま、いいか。子供たちも大きくなったし」。
 でも、諦めなければならい夢や、希望のことを想い、少し涙。
 それから、なんだか力が湧いてきて
 「ようし、もし癌でも、最後まで、しっかり闘うぞ。近くて便利な信大病院にお世話になり、主治医を信頼して治療に励もう。大丈夫、きっとよくなる、、、、。」
 しばらくすると、もしかして死ぬかもしれないことが、恵みのように思えてきました。
 「あたし、もう、頑張って生きていなくてもいいんだ。もう、死んでもいいんだ。あらら、なんて、楽ちんだろう」
 それは、名状しがたい安堵でした。
 100歳まで生きるであろうと観念し、それまでをどうして暮らしてゆこうかと四苦八苦していた大変さが、あっさりと消え、とても楽になったのです。
 翌日曜日、癌の専門医で信大の研究科に席をおく方にミサで会い、相談すると「信大はアポイントメントがないと受診できないので、月曜日に行って、ともかくアポを貰うように」との指示。
 それから、彼女は言いました。
 「つい最近、私の母も同じ知らせを受け、その夜、私は夢を見ました。夢のお告げは、一晩中祈りなさい、で、私は、その夜は一睡もしないで朝まで祈りました。母は、翌日、癌の精密検査を受け、結果は、癌ではない、でした」。すごい祈り、なんという強い愛!
 彼女は12歳の時に、修道女になりたいと思い、その心は今も変わらず、独身のまま医者として、神と共に生きている人です。マザーテレサのように。
 その彼女が、私に「今度は、あなたのために祈ります」と言ってくださったのです!
 美しい大きな瞳を私向けて「信じて!」と続けました。それは、神の守りを信じて、という意味。
 翌月曜日、アポだけ貰うつもりで信大に行ったのに、幸運にも受診が叶いました。
開封は受診機関で、という書類には、あんまり恐ろしいことは書いてなかったようです。名門病院の医師は「そんなに急ぎませんので」と言い、精密検査のCTは8月25日に、結果発表は9月7日になりました。
 憧れの信大病院に、涼を取るためではなく、正式に関われたのです。感謝。
 ほんの少し乱高下した2日間。神の恵みとはこういうものか、と知りました。

 松本のぼんぼんの前の日曜日、ミサ後のカフェで、浴衣の帯の打ち合わせをしていたら、偶然同じテーブルにいた方が「あら、私も浴衣を着てみたい」と言って下さり、ぼんぼんの当日、我が家へおいでなりました。ご挨拶は初めてのイラクの方でした。
 松本ぼんぼんの土曜日は35度の酷暑日
で、着付けのために、オランダの留学生二人が来る直前も、教会の日本人・フィリピン・イラク人が来る直前も、庭と家の周辺に水を撒いて、ささやかなクールダウンの試み。
 さて、後半の教会組4人の浴衣姿が出来上がり、あたふたと会場へ向かう車の中でのこと。この間10分弱。
 隣席のイラン人(超美人!)にお名前を伺い、何をなさっている方かお聞きしました。
 彼女は医師でした。それも、イラクで6人しかいない小児がんの専門医でした。
 彼女は、トルコやシリアに近いイラク北部の都市、ティグリス川のほとりのモスルに生まれ、そこで医師として働いでいましたが、ISの度重なる浸攻を受け、命の危険にさらされました。
 銃を突きつけられ、あるいは銃弾を奇跡的に免れ、24時間以内に脱出しなければ全員殺害という宣言を受け、国外に脱出した多くのイラク人の一人でした。
 脱出先の国で開催されていた学会で、研究を発表した後、思わず涙ぐんでしまったら、日本の友人が「どうして涙ぐんだの」と聞いてくれたそうです。訳を話したら、日本への道が開かれた、とおっしゃいました。
 盆踊り会場へ急ぐ車の彼女は透き通るように美しく、しかしその話はあまりにも重くて、私は、ぽか~ん。
 車を降りる間際、彼女は言いました。
「こんな話を、一昨日、NHKの朝の番組の「あさイチ」で話してきたのよ」
えええっ~~~!!! なんと、彼女は有名人なのでした。
 そういえば、隣でぼんぼんを踊っている最中も、どこかのテレビが彼女めがけてカメラをぐるぐる回していましたっけ。


 月曜日は予定がないことが多いので、たいてい1日家います。
 今日の予報は35度。避難しようか迷いましたが、やっぱり家でいろいろすることがあります。
 梅を干したり、青じそを摘んで醤油漬を作ったり、三つ葉や菊菜を摘んでお浸しにしたり、きゅうりもみ作ったり、洗濯や裁縫。
 昨日、ウナギが半額になっていたので、今日の昼食は白飯を炊いてうな重でした。
これで、今日は家にいても大丈夫。皆さまもお元気で。

3泊2日で娘がいた2泊目の夜、寝る前に娘の肩をもみながら、なんとなくおしゃべりをしました。
その後、娘の布団の傍らで私も横になり、子守歌みたいに、心に浮かんだことを話していました。
ついつい話していたのは我が父のこと。
「父と娘だから、愛の関係があればいいのに、こちらが優しい気持ちで電話したり、訪れたりすると、決まっていや~~な気持ちにさせられるの。それは、手ひどい打撃で、毎回長期に苦しみ、なんとか立ち直って、再チャレンジするけど、また、同じ結果。私はもう、電話したり行ったりしないことにしたの。どう思う?」
心理学者の娘はいいました。
「それで、いいのじゃないの。人の心は、感情と思考と行動を一致させようとするの。一致しているのが健康な人。この3つが一致していないと、どこかを捻じ曲げて無理やり一致させようとし、病気になるのよ。だから、嫌な事はしないのがいいの」。
さらにだらだらと、父はどんな時にカッー!と激高するかの観察結果を述べ、最近収集した父の生い立ちの新情報を報告しました。
娘は黙って聞いていました。もう、寝てしまったかも、、、、。
しかし、彼女は、考えていたのでした。娘曰く
「ねえ、それってこういうことじゃない。
お祖父ちゃんは、彼のお母さんと彼の娘(私のこと)を重ねているのよ。
お祖父ちゃんは、特異な家庭で最も弱い立場で虐げられていた自分の母を、毎日真近で見、苦しんでいたのよ。女が優しく弱い気持ちでいる時、カッー!とするのは「もっと自分を大切して!」という母へのいらだちを、自分の娘に重ねて吐き出しているのでは?」
思いもかけない分析のお言葉。
長~~い間、私を苦しめた「父は何故、こちらが優しい気持ちでお仕えしたいと思うような時に、わざわざイヤ~~な気分にさせるのか」の疑問が解けました。臨床心理士、恐るべし。
父は、私が一人の人間として、父や母などの犠牲にならず、自分の幸せを追求して欲しいと思っている、と思ってほぼ間違いありません。
父さん、ありがとう。感謝します。

 眼鏡の度が合わなくなったので、今から、豊科日赤病院の眼科へ行ってきます。
 奈良井川を北へ、ミニバイクでドライブ。夏の旅行という気分です。
 もうすぐ誕生日の孫と長男のために、クッキーを焼いたので、ついでに、三郷のおぐらやま農場へ寄って、小さなプレゼントを届けます。
 孫に会えるといいのだけれど。
 どあい冒険クラブの夏のキャンプは、もう、始まってしまったかしら。

 昨日の日曜日は、早朝の女鳥羽川岸一斉清掃の時点から、真夏の太陽がギラギラ、せみの声がムンムンだったので、日中の暑さを警戒。
 クーラー無しの我が家にいるのは危険と踏んで、午後は信大病院に避難することにしました。
 朝、針と糸と布を持ち、3本のペットボトル(お茶、麦茶、コーヒー)を用意して家を出、ミサが終わったらそのまま信大病院へ直行。
 日曜日、人影もまばらな静かで涼しい大学病院で、ひたすら針を動かし、午後を過ごしました。
 人の「生き死に」を包み込んできた、この空間には、特別な空気が流れています。   
 慰めや、励ましや、優しさや、明るさ。
縫っていたのは、夢のお告げの服です。
 夢の中でひらひら揺れていた、鮮やかなローズピンクの服を模して絹布を探し、同色の夏のブラウスを作ることにしたのです。
 一階の理美容室入口ベンチの前を、杖の音を響かせて、ゆっくりと通り過ぎる人がいます。
 車椅子の人に優しく語りかけながら通過する、介護の人がいます。
 目の前の廊下の床に、カメ虫がうずくまっていたので、外へだしてやろうと近づくと、通りかかった男性が「それにさわったら、臭いよ」と声かけてくれました。
 で、私はカメ虫の一歩手前でフリーズ。「このままだと、踏まれて、危険だけれど、、、」
 緑虫クンは、やがて自ら大きく羽ばたいて、飛んでゆきました。
 椅子の下の床に小物を落とし、足元を探していたら、若い男性の声が。
 「大丈夫? 針に糸を通してあげましょうか?」。
 「大丈夫よ」と答える私は、なんだか幸せです。
 後半は東側入口脇のテーブル席に移動。売店が近く便利です。
 陽はやがて傾き、ローズピンクの絹のブラウスは完成し、私はアジールを後にしました。

< 2016年08>
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