連載520.小説『山を仰ぐ』第7章ー③結婚と別れー65

連載520小説『山を仰ぐ』第7章・臥雲辰致の誕生―③結婚と別れー65 
 (二人で過ごした岩原で、辰致はキヨに「子供が楽しみだ」とい言い、キヨは「もし、子供が出来てタッチさがいない日が多いなら、子供は他の親無し子と一緒に尼寺で育てたい」と言いました。)
 
 十日が経って、森の家を離れる時、タッチさは荷車にまだ未完成の臥雲式布織機を乗せた。タッチさは言ったじ。
 「波多では、新発明の私の糸紡械で、綿糸を作る他に、飛び杼を使った私の綿布織機も稼働させる計画があるだ。それで、波多の衆が、布織機も早く見たいというのせ。まだ未完成だが、持って行くべ。
 納次郎にも荷運びを手伝ってもらうから、十日ほど、納次郎も連れて行くわな。キヨ、納次郎の顔が毎日見れなくてもええかや」とさ。
 なんと言うことだ。キヨは、大丈夫だじ。俊量さまや寺の女子供たちと一緒だもの。隣りには青柳先生だって、産婆の奥さんだっているずら。

 十日経って納次郎が戻ってきた時、納次郎も小多田井の実家を素通りして、堀金のキヨの顔を見にきてくれたさ。
 秋風の立つ縁側で、キヨは納次郎をお茶やお菓子でもてなし、波多でのタッチさはどんなんか、興味津々に聞いたのせ。
 納次郎も嬉しそうにいろいろ話してくれたさ。
 「兄やは忙しくしているじ。工場の設計をしている人や、機械を作る大工や、いろいろな人が、兄やに「これはどうしたらいいかや」と聞きにくるだ。
 春と夏に持っていった二台の機械は、一時、河澄家の土蔵に置いているだから、そこが兄やの仕事場兼泊り場だな。
 おらは土蔵のすぐ近くの母屋で寝かせてもらったじ。河澄東左さんの話では、兄やにも母屋で寝るように勧めているだが、お断りなんだそうだ。
 食事は河澄家でいただいていたので、皆さんと親しくなったじ。東左さんは、兄やに『波多に移住してこないか』と言ってくれているだ。兄やはもう、波多には無くてならない人なんだと」

 (次回、連載521に続く。
 先の土曜日の安原地区公民館文化祭とひろば祭りでは、またまた踊りました。写真はアルゴス・ハサピコスと羊飼いのマズルカ。私が踊ったのはエレヴバとリトルマン・イン・ナ・フィックスなので、写真には写っていません。日本舞踊の発表もありました)

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