連載542.小説『山を仰ぐ』第8章発明家ー①糸が語る波多の臥雲辰致ー7
2024/11/30
連載542。小説『山を仰ぐ』第8章・発明家ー①糸が語る波多のの臥雲辰致ー7
父の河澄東佐が続けました。
「うちの水車でいいもんかどうか、これから見にいくだが、その前にここで皆で昼飯を食べましょ。準備もさせてあるだいね」
智恵さまが慌てて言いました。
「それはありがたいですが、私は昼までにはお暇(いとま)をするつもりでまいりました」
父が続けます。
「まあ、そういわずに、飯をあがっていきましょ。水車小屋へ案内したり、波多腰さんが音頭をとってる新堰も見せなきゃならんでしょ」
村や県の仕事で忙しい武居美左雄さんと、遠くから来てくれた青木橘次郎さんは先に帰り、波多腰さんと、正彦さんと、智恵さまが、我が家で昼食囲んでくださいました。
私が給仕をしていると、正彦さんが声をかけてくれます。
「糸さん、おはるか振りですね。お元気そうで何よりです。しかし、糸さんは、臥雲さんとはもっと久しくお会いしていないのではないですか」
父が驚いて声を挙げました。
「おや、なんだい、お前さんたちは知り合いだっただか」
正彦さんと智恵さまと私は互いに目を合わせて、いたずらっぽく微笑んだのでございます。
私が言いました。
「智恵さま、おはるか振りでございます。以前岩原でお会いした糸でございます。智恵さまは、今、お名前が変わったのですか」
智恵さまが応えました。
「はい、還俗して、臥雲辰致(たっち)を名乗りました。弧峰院が臥雲山弧峰院という寺でしたから。名前は正式には辰致、ときむね、ともうします」
(次回、連載543に続く。
写真は、この秋の思い出)
父の河澄東佐が続けました。
「うちの水車でいいもんかどうか、これから見にいくだが、その前にここで皆で昼飯を食べましょ。準備もさせてあるだいね」
智恵さまが慌てて言いました。
「それはありがたいですが、私は昼までにはお暇(いとま)をするつもりでまいりました」
父が続けます。
「まあ、そういわずに、飯をあがっていきましょ。水車小屋へ案内したり、波多腰さんが音頭をとってる新堰も見せなきゃならんでしょ」
村や県の仕事で忙しい武居美左雄さんと、遠くから来てくれた青木橘次郎さんは先に帰り、波多腰さんと、正彦さんと、智恵さまが、我が家で昼食囲んでくださいました。
私が給仕をしていると、正彦さんが声をかけてくれます。
「糸さん、おはるか振りですね。お元気そうで何よりです。しかし、糸さんは、臥雲さんとはもっと久しくお会いしていないのではないですか」
父が驚いて声を挙げました。
「おや、なんだい、お前さんたちは知り合いだっただか」
正彦さんと智恵さまと私は互いに目を合わせて、いたずらっぽく微笑んだのでございます。
私が言いました。
「智恵さま、おはるか振りでございます。以前岩原でお会いした糸でございます。智恵さまは、今、お名前が変わったのですか」
智恵さまが応えました。
「はい、還俗して、臥雲辰致(たっち)を名乗りました。弧峰院が臥雲山弧峰院という寺でしたから。名前は正式には辰致、ときむね、ともうします」
(次回、連載543に続く。
写真は、この秋の思い出)