連載593.小説『山を仰ぐ』第8章発明家ー②開産社と博覧会ー27

連載593。小説『山を仰ぐ』第8章・発明家ー②開産社と博覧会ー27
 (第一回内国勧業博覧会に出品する辰致の機械は、間口一間の押し入れ程の大きさで、木作りで重く40本の筒はブリキでした。語りは糸)

 一方、臥雲式布織機は、出品されないことになりました。ガラ紡機と布織機の成り立ちに違いがあったからです。
 ガラ紡機は、辰致さまが二十年も前から日夜考え続け、原理からすべてを独自に作り上げたものです。
 対して布織機は、明治七年の第二回京都博覧会に、留学生が持ち帰った「飛び杼」のうわさを聞き、それがどんな機械であるか想像しながら、辰致さまが独自に作り上げた機械でした。
 名前を聞いただけで、どんなものか作りたくなってしまうのは、辰致さまの昔からの癖で、波多の川澄の土地を測量した測量器も、そのようなものだったと糸は聞いております。
 そもそも、西洋での飛び杼(杼(ひ)・シャトルを飛ばす機械)はイギリスのジョン・ケイによって発明され、産業革命のきっかけになった優れもので、発明以来、西洋では改良が重ねられ、日本でも移入以来バッタンと呼ばれて模倣がすすんでいたのです。
 松本の開産社の展覧場では、ガラ紡機と並んで臥雲式布織機も動態展示をされていましたが、臥雲織機は、日本でも出回り始めた西洋のバッタンの正確な複製からしてみれば、完成品とは言えません。
 それで、臥雲布織機で製布はできでも、布織機そのものは、勧業博覧会の発明品目録に入れるにはふさわしくなかったのです。
 本格的な機械織機は、十年後、豊田佐吉によって発明されることになります。

 (次回、連載594に続く。
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