連載614.小説『山を仰ぐ』第9章栄光と事業の困難―①再婚と天皇天覧―1

小説『山を仰ぐ』 
連載614 第9章・栄光と事業の困難ー①再婚と天皇天覧ー1
 (今日から、第9章がはじまります。博覧会で日本一の栄誉を受けた臥雲辰致ですが、糸は、「政府は、日本の近代化を急ぐ必要から、ガラ紡の特許を無視し続けたのではないか」と思いました)
 
 秋が深まり、柿むきが終わって柿すだれが軒を飾る頃、「東京へ行った辰致さんはどうしているだかやぁ」とやきもきしていた波多の糸のもとへ、正彦さんからの急ぎの手紙が届きました。辰致さまのガラ紡機が、第一回内国博覧会の最高賞を受賞したとの知らせでした。
 正彦さんは手紙の中で、自身の高揚した気持ちを伝え、ついでに、
 「これは絶好の機会だから、糸さんと臥雲さんの縁談を、今度は私が本腰を入れて勧めたい」と書いてきました。正彦さんは、
 「この正月に開産社の工場内で、臥雲さん、糸さんと三人で話した時に、この二人はお似合いだと確信した」のだそうです。
 「受賞してお祭り気分の、この機会をのがしたら、臥雲さんはまた、発明と仕事一筋の堅物人間に戻ってしまいますから」と。
 「臥雲さんがまだ東京にいるうちに、その話をしようと思いますが、糸さん、それでいいですね」ですって。
 ま、糸に異論はがありませんが、果たして、うまく行くでしょうか。

 (次回、連載615に続く。今日から、第9章がはじまります。最後から二番目の章です。
 写真は近くの美ヶ原温泉白糸の湯へ続く道のはなもも。春が来ました)

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