連載577.連載『山を仰ぐ』第8章発明家ー②開産社と博覧会ー11

連載577。小説『山を仰ぐ』第8章・発明家ー②開産社と博覧会ー11 
 (設立した連綿社の工場を、開産社内で始めることになったので、辰致は、波多に置いてあった機械を松本に運びました。語りは糸。)

 明治九年五年十九日の信飛新聞(第143号)は、辰致さまの機械が松本開産社内に運ばれた様子を次のように伝えています。
 「弊社123号に報じました四大区波多村にて、製木綿糸機械並びに製布器械とも、新発明の工夫がいよいよ成功いたし、四、五日前に、北深志町の開産社に運搬して、開産社の水車場の、女鳥羽川の流れに、右の機械を据え、県の役人がこれをご覧なされて、お褒めがありました。
 いや、工夫というものは、恐ろしいものであります。
 東京王子の(輸入された大型の紡績)機械よりは手軽で、繰綿をキリキリ糸に引き出す所は、さながら婦女子が、糸繰り車を数十人並んで、木綿の糸を引き出すようです。
 製布の器機が杼(ひ)を遣(つか)い、梳(くしけず)る紐を打つ仕掛けも出来ました。
 この機械の発明は、県下九大区の臥雲辰致さんで、波多村の波多腰さん方の、激励奮闘により、落成の成果が産まれました。 国益を興すの一器です。
 智恵を振って、皆さん新発明をすれば、日本の身上を立て直す義務を識り、人間仲間の上等に連なります。
 さも無くば、世間流行に連れ、兄弟利得の工夫ばかりで、兄は弟、弟そのまた弟を謀りて利を射る如き蓄財商法では、新聞屋は余り誉められませんね」
 信飛新聞のこの記事を読んで、糸は笑ってしまいましたよ。最後のほうが、なんか可笑しいでしょ。
 辰致さまや波多腰さまを取材して、なにがしかの感動があったのですね。新聞屋の自分自身を恥じていますよね。市川量造さんの記事にちがいありません。

 (次回、連載578に続く。
 寒いので着物(和服)シリーズ(和服は温かいの)。一枚目は今年の写真、数年前のが2枚、最後のは去年です)

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