2022/09/01
連載320。小説『山を仰ぐ』第5章・栄弥―①俊量が語る少年栄弥―26
(前回栄弥は、魔法のような大工の仕事に魅せられていました)
現場では棟梁や大工や見習いの弟子に、声を掛けてもらうこともありました。
「ほれ、じゃまだ。あっちへいけ」というのも頻繁でしたが、
「おい、坊主、幾つだい」
「どこの村の子だい」
「大工仕事は面白いか?」など。
ある日、宮大工の棟梁が訊(き)いてくれました。
「おい、坊主、お前、何か作りたいものが、あるだかい」
その時、栄弥さんは黙ったままでしたが、しかし、つぎの日に、勇気を出して言ったのです。
「おらは、からくりをつくりたいだ」
棟梁は驚いて、言いました。
「おや、まあ、なんてこんだい。どんなからくりを作りたいだか」
栄弥さんが答えます。
「どんなんかは、まだ、わからないだ。だけど、父(とと)さ母(かか)さの糸繰りを助けるからくりの道具を作りたいだ」
小田多井中村の大工さんが言いました。
「よう、栄弥よ、わしは、お前の家に幾つもの糸車をこしらえて納めたずら。あれじゃいかんのかえ」
(次回、321に続く。
動画は、小さな音で録音できなくてすみません。スマホの音を小さくしていただけると見やすいです。6秒)
(前回栄弥は、魔法のような大工の仕事に魅せられていました)
現場では棟梁や大工や見習いの弟子に、声を掛けてもらうこともありました。
「ほれ、じゃまだ。あっちへいけ」というのも頻繁でしたが、
「おい、坊主、幾つだい」
「どこの村の子だい」
「大工仕事は面白いか?」など。
ある日、宮大工の棟梁が訊(き)いてくれました。
「おい、坊主、お前、何か作りたいものが、あるだかい」
その時、栄弥さんは黙ったままでしたが、しかし、つぎの日に、勇気を出して言ったのです。
「おらは、からくりをつくりたいだ」
棟梁は驚いて、言いました。
「おや、まあ、なんてこんだい。どんなからくりを作りたいだか」
栄弥さんが答えます。
「どんなんかは、まだ、わからないだ。だけど、父(とと)さ母(かか)さの糸繰りを助けるからくりの道具を作りたいだ」
小田多井中村の大工さんが言いました。
「よう、栄弥よ、わしは、お前の家に幾つもの糸車をこしらえて納めたずら。あれじゃいかんのかえ」
(次回、321に続く。
動画は、小さな音で録音できなくてすみません。スマホの音を小さくしていただけると見やすいです。6秒)
