2022/04/04
(連載159。小説『山を仰ぐ』第4章俊量(良)-①中町時代-19
(前回は、良の祖父が語った洗馬の釜の井庵と熊谷医院へ、後に良の兄が書生に行ったところまで)
さて、十三の春を迎えていたわたくしには、縁談の話しがありました。早すぎるお話しではありましたが、住む場所を探すという、常ではない事情があったために、そのようなことが起こりました。
お相手は、同じ中町通りの大きな呉服屋の跡取り息子で、兄と同級、幼なじみでもございます。一緒にチャンバラごっこをしていた仲でした。すぐに嫁ぐということではなく、嫁入り修行も兼ねて、呉服屋で暮らしてみたら、というようなことで。
その跡取り息子はいじめっ子でしたので、わたくしは本人に直接言ったのですよ。その目をしっかりと見て。
「あなたは、私の髪のかんざし抜いたり、背中をわざとドンと押したり、雪投げで私ばかりをねらったりしたいじめっ子でしたから、嫁になるのはいやです」
すると跡取り息子は、顔を赤らめて言いました。
「いじわるしたのは、良ちゃんが好きっだったからなのせ」
なんと!
男心は不可解なものです。すぐには理解することも、信じることも出来ませんでしたが、やがて
「そうかもしれない、、、」と思うようになりました。そういうことも、ありうるかも、、、、と。
わたくしは二軒隣りの呉服屋で暮らすようになりました。父と母はすぐそばの蔵にいますし、商店街はもともと家族のようなものでしたから。あまり深くも考えずに。
(次回、連載160に続く。
写真は、私の可愛い人(たち)2年前の昨日がお誕生日。生まれた日の撮影です)
(前回は、良の祖父が語った洗馬の釜の井庵と熊谷医院へ、後に良の兄が書生に行ったところまで)
さて、十三の春を迎えていたわたくしには、縁談の話しがありました。早すぎるお話しではありましたが、住む場所を探すという、常ではない事情があったために、そのようなことが起こりました。
お相手は、同じ中町通りの大きな呉服屋の跡取り息子で、兄と同級、幼なじみでもございます。一緒にチャンバラごっこをしていた仲でした。すぐに嫁ぐということではなく、嫁入り修行も兼ねて、呉服屋で暮らしてみたら、というようなことで。
その跡取り息子はいじめっ子でしたので、わたくしは本人に直接言ったのですよ。その目をしっかりと見て。
「あなたは、私の髪のかんざし抜いたり、背中をわざとドンと押したり、雪投げで私ばかりをねらったりしたいじめっ子でしたから、嫁になるのはいやです」
すると跡取り息子は、顔を赤らめて言いました。
「いじわるしたのは、良ちゃんが好きっだったからなのせ」
なんと!
男心は不可解なものです。すぐには理解することも、信じることも出来ませんでしたが、やがて
「そうかもしれない、、、」と思うようになりました。そういうことも、ありうるかも、、、、と。
わたくしは二軒隣りの呉服屋で暮らすようになりました。父と母はすぐそばの蔵にいますし、商店街はもともと家族のようなものでしたから。あまり深くも考えずに。
(次回、連載160に続く。
写真は、私の可愛い人(たち)2年前の昨日がお誕生日。生まれた日の撮影です)
