(連載159。小説『山を仰ぐ』第4章俊量(良)-①中町時代-19
 (前回は、良の祖父が語った洗馬の釜の井庵と熊谷医院へ、後に良の兄が書生に行ったところまで)

 さて、十三の春を迎えていたわたくしには、縁談の話しがありました。早すぎるお話しではありましたが、住む場所を探すという、常ではない事情があったために、そのようなことが起こりました。
 お相手は、同じ中町通りの大きな呉服屋の跡取り息子で、兄と同級、幼なじみでもございます。一緒にチャンバラごっこをしていた仲でした。すぐに嫁ぐということではなく、嫁入り修行も兼ねて、呉服屋で暮らしてみたら、というようなことで。
 その跡取り息子はいじめっ子でしたので、わたくしは本人に直接言ったのですよ。その目をしっかりと見て。
 「あなたは、私の髪のかんざし抜いたり、背中をわざとドンと押したり、雪投げで私ばかりをねらったりしたいじめっ子でしたから、嫁になるのはいやです」
 すると跡取り息子は、顔を赤らめて言いました。
 「いじわるしたのは、良ちゃんが好きっだったからなのせ」
 なんと!
 男心は不可解なものです。すぐには理解することも、信じることも出来ませんでしたが、やがて
「そうかもしれない、、、」と思うようになりました。そういうことも、ありうるかも、、、、と。
 わたくしは二軒隣りの呉服屋で暮らすようになりました。父と母はすぐそばの蔵にいますし、商店街はもともと家族のようなものでしたから。あまり深くも考えずに。

 (次回、連載160に続く。
 写真は、私の可愛い人(たち)2年前の昨日がお誕生日。生まれた日の撮影です)

< 2022年04>
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石上 扶佐子
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